発展途上の王国
「胃に優しい、甘いやつにしてね」
「善処します」
「大丈夫だって。サナのご飯、なんでもおいしいから」
上気した頬で微笑む夏代くんの顔も犯罪に近い。
わたしは警察官になったつもりで、
夏代くんに肩を貸して寝室へ連れていった。
そんな心境でいないと、
わたしの理性がもたない。
ベッドに寝かせて、
冷房を入れる。
仕事場より新しいクーラーはいち早く熱を取ってくれてありがたい。
「ねえ、サナ。手、握っていてくれる?」
彼の高性能の頭がオーバーヒートを起こして、
いつになく弱気だ。
こんな姿を見られるのはわたしの特権で、
密やかにうれしい。
「この、さびしんぼ。寝入るまでだからね?」
夏代くんは目もとまでほころばせて笑った。