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応接スペースのテーブルにはカレーが置かれている。

夏代くんがリクエストした“胃に優しいカレー”だ。



「作中のようなオーソドックスなカレーじゃなくてすいません」



<ハルヨシ先生>の担当編集者である櫻井さんはいつも決まってお昼頃に、
完成原稿を取りに来る。



「お豆腐を使ったカレーなんて、初めて食べました」



おいしいと満足げに微笑む眼鏡編集者の言葉に安堵する。

けれど一番に言って欲しかった夏代くんはベッドの中だ。



「ごちそうさまでした」



食べ終わると、
櫻井さんは壁面にあるスケジュールボードを眺めた。

それを見ると進行状況が手に取るようにわかる。



「先生は相変わらずお忙しそうですね」