《第9章 新しいベッドを買ってもいい?》


 銀の糸のような美しい雨はいつしか上がり、日が高くなるとともに猛烈な暑さが再来する。

 自然光は、濡れたビルの壁面や街路樹、そして水たまりに乱反射して、街中にいつも以上の光を溢れさせていた。

 今日から八月。

 びっくりするほど普通に過ごしていた。

 ただ、楽しさや張り合いは感じない。毎日を惰性で生きている感じだった。


「暑い……」

 銀行二箇所を車でまわってきただけなのに、額には汗が滲んでいる。

 日焼け防止のために半袖のブラウスの上に着ていたサマーニットのカーディガンを脱いで、冷蔵庫で冷やしておいた自分用のペットボトルのストレートティーを口にした。

 最近、無意識に買ってしまう。

 紅茶を飲む習慣がなかった私は今も世良さんを忘れられなくて、毎日、彼を思い出しては胸が締め付けられるような感覚を味わっていた。

 シンガポール支社への異動の辞令はいつでるのだろう。

 結婚の準備は進んでいるのだろうか。

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