月曜日の朝。昨日の興奮が続いているのか、いつもより早く目が覚めてしまった。

「給料日も近いし、早めに行こうかな」

わたしはほぼスッピンの顔に黒縁眼鏡をかけて出勤した。

天気がよく、ビルの跳ね返す朝日が眩しい。時間が早いからか、いつもなら人が多い正面玄関やエントランスには誰もいない

まだ誰も出勤してないかな……。

そう思っていたが、エレベーターの前で見慣れた人を見つけた。

長身で、少し冷めた表情の彼……征一郎さんだ。

昨夜会ったばかりだから、ちょっと変な感じがする。

「おっ、おはようございます」
「ああ……おはよう」

ドキドキしながら挨拶をすると、こちらを振り返った征一郎さんの顔が柔らかくゆるんだ。

征一郎さんがボタンを押してくれていたので、エレベーターは一階へすぐにやってきた。

いつもは混み合うエレベーターだけど、今日はふたりきり。電子音を立てて開かれた中へ、気恥ずかしさを感じながら乗り込む。

「……き、今日は早いんだな」

征一郎さんが軽く咳払いをしてたずねてきた。ふたりきりのせいか、エレベーター内がやたらと静かに感じる。

彼もこの空間が落ち着かないのかもしれない。

「給料日が近いので早く来ました。征一郎さんも今日は早いですよね?」
「ああ、俺も給料日が近いから」
「そうですか」

答えながら征一郎さんの顔を見つめる。目の下にうっすらとクマができているように思うのは気のせいだろうか。

「昨日、ちゃんと寝ましたか?」

心配になってたずねると、征一郎さんは焦ったように眼鏡をグイと上げた。

「ね、寝たよ。今日は本当にたまたま早く起きただけで。べっ、べつにシーツをすぐに洗うべきかどうしようか悩みすぎて眠れなかった……というわけじゃないんだ」
「……眠れてないんですね」
「あっ……!」

征一郎さんは耳を真っ赤にして俯いた。


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