ロリポップ
甘いのはお好き?
 あの後、沈みに沈んだ私は、帰ってからお風呂に入って、日も高いうちからひたすら眠った。
 起きていたら余計な事を考える自分が嫌でたまらなかった。
 考えたくないのに、行き着く先が自分がダメなんじゃないかって事に。
 思考を止めるには寝てしまうのが一番。
 寝てしまえば何も考えなくていい・・・スマホの電源も切って、ベッドに潜り込んだ。
 ひんやりとした肌触りに、一瞬、鳥肌が立つ。
 それでも、しばらくすれば自分の体温で温まってくる布団の中で、誰かの温もりがあればと考えてしまうのは、今朝の恩田君のせい。
 けれど、自分の体温で布団が温まる事を知っているように、誰かに甘えても居られない事も分かっている。
 そして、私は静かに目を閉じた。



 次の日が仕事でよかったと、仕事を始めて初めて思ったかもしれない。
 まだ、休みが欲しいとは何十回と思ったけれど。
 仕事に没頭していたらほかの事を考えなくて済む。

 
 ああ、でも、友華や瑛太に会うのは気が重い。
 林田君はどうでもいいけど・・・・・。
 そんな事を思いながら会社に向かう。
 


「音羽!」


 後ろから呼ばれたその声に、振り返らなくても分かる。
 ああ・・・ホント、滅多に朝からとか会わないのに瑛太に会っちゃうし?
 


「おはよ、何?」


 勤めてそっけなく返事をする。
 私を置いて二人で帰ったこと、知ってるんだからね・・・と視線を向ける。



「おはよ、って、林田、お前残して帰った訳?」



「マジかみたいな顔してるけど、あんたら二人だって帰ったんだから同罪でしょ。だいたい、女の子の電話で居なくなっちゃう林田君に後をまかすって・・・いい加減すぎる」


 むくれる私の頭をポンポンと撫でながら、悪い悪いと言う瑛太はとても悪いと思っている風には見えない。ほんと、友華とよくにてるわ。



「もういい」



 頭の手を払いのけると、瑛太が細目を更に細めて顔を寄せてくる。



「な、何よ?」


 近い!顔が近すぎる!


「じゃあ、お前、誰と帰ったの?」


 うわ・・・何、そのいやらしい顔。
 聞くなってオーラを出してるでしょ、私。
 空気読めよ、マイペース瑛太!

 何も言わず近づけてきた顔を押しやる。
 


「もしかして・・・・・恩田?」



「・・・・・そうよ、何?」



「ふ~ん・・・」


 そう言って、そのまま歩いて行く瑛太。
 ちょっと、ふ~んて何よ。
 続きがあるんでしょ!?
 言いなさいよ!
 気になるから言ってから行きなさいよ~!!!




 

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