「公認の不倫なんて!あなた達何考えてるんですか!こんな馬鹿馬鹿しい事…」






百合子はソファーから立ち上がって大きな声で孝弘に言った。


しかし、酒を飲み過ぎた上にあまりの衝撃と怒りで血圧が急上昇したのか立ちくらみまた座りこんだ。





「百合子さんの反応は正常な反応です。最初は歩美さんもそうでした。友美さんは…あの人は最初から何もかも諦めているようでしたからそこまでは驚かなかったかな。だけど、今ではパーティーの度に鍵を引いてその相手と一夜を過ごしています」





グラスのブランデーを一口飲んで孝弘は静かに話す。





「あの…ちょっと待って下さい、鍵を引いた相手と一夜を過ごすってどういう事ですか?」






百合子の顔がみるみる青くなっていく。








「不倫サークルのルールをお教えします。まずは部屋の鍵を集め目を閉じて一斉に引く。その鍵の家の妻もしくは夫がその夜の相手です。その関係は一夜だけ。同じ相手と何度当たっても恋愛感情は抱かない事。そして、夫婦の間で、その夜の事は詮索、干渉はしない事。勿論、この事は他の人には漏らさない事…。まぁこんなところです」







「じゃあ、うちの主人は…私帰ります!こんな所であなたと話している場合じゃあありませんから!」







そう言って百合子はバックを持ち自宅へ帰ろうとした。







「ご主人なら心配いりません…」







孝弘の言葉に百合子が振り返る。








「瑠璃子はあなたのご主人とは今夜は何もしないはずです」







「どうしてそんな事が言い切れるんですか?」







百合子は不安のあまり涙ぐみながら孝弘に聞いた。








「まあ、座って下さい。もし、心配ならお宅に見に行っても構いませんが、その必要はないでしょう。おそらく僕と同じで瑠璃子も直人さんに話をしているはずです。それが礼儀ですから…」






「礼儀って…。あなた達がしている事に礼儀も何もないでしょう?」






「百合子さんは夫婦ってどうあるべきだとお考えですか?」







孝弘の突然の質問に百合子は戸惑った。







「それは…お互い愛し合って、思いやりを持って接するとか、相手を傷つけないとか…とにかく不倫なんてそんな事は絶対しない。私はそうあるべきだと思います!」







「そうですか…。それではいつか限界がきてしまうんですよ、夫婦って。特に僕達みたいな人種はね…」






少し寂しそうにそう言う孝弘の様子を見て、百合子はバックを置きソファーに腰かけた。







「どういう意味ですか?」







「僕達は金持ちだ。こんな事言うのは好きじゃないけど、普通の家庭に比べたら明かにいい暮らしをしているし、金での苦労がない。ある程度の事なら金で解決できるし、欲しい物だって手に入る。だからその分退屈なんですよ…」






百合子は直人と結婚するまで普通の家庭で育ち普通の暮らしをしてきた。



だから、裕福な家庭で育った直人と結婚して最初は直人との金銭感覚の違いに少し戸惑う事もあった。


百合子が仕事を辞めても充分過ぎる収入はあるが、辞めないのは普通の感覚を失うのではないかという不安があるからだ。







「退屈しのぎでこんな事されてるんですか?」








「言葉が悪かったですね…。退屈じゃなくて、二人での共通の夢や目標が持てないって言った方が正しいかな…。僕達には他の人みたいな金の苦労がない分絆も深まるような出来事が無い。気持ちが冷めてしまえば何も残らないんですよ。だけど、一度死ぬほど愛した相手となかなか別れる事もできない…」







孝弘は自分を哀れむように笑った。





「神山さんや栗林さんもそうなんですか?」






「神山さんはお父さんの立場上スキャンダルは御法度です。絶対に外に漏れずに楽しめるこのサークルは彼にとっては絶好の遊び場なんです。栗林さんはおそらく友人の妻との後腐れない火遊びを楽しんでいるんでしょう」





ここは…セレブと呼ばれる彼らにとっての究極の遊び場という事なんだろうか…






百合子は鳥肌が立った。















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