「ただいま…」






誰もいない広い部屋に直人の声が寂しく響いた







仕事を片付けて会社を出たのは、すでに百合子が学校に着いている頃。







テーブルの上のメモを手に取った。






【お帰りなさい。お仕事お疲れ様です。冷蔵庫にサラダとビーフシチューが入っているので温めて食べて下さい。 百合子 】







メモをテーブルに置いてシャワーを浴びに浴室へ向かった。







熱いシャワーを浴びて洗面所で髭を剃ろうと、棚の中を開けた。







そこには小さな紙袋が入っていた。







直人は何となくそれを手に取り中身を見た。









中には妊娠検査薬と体温計、そして小さな手帳とペンが入っていた。









「何だ…これ」









手帳をめくった。










そこには、百合子の字で毎日の体温と生理の日
排卵日など細かく記録されていた。







手帳の先頭の日付は南宅から百合子が戻って直人が百合子を2年ぶりに抱いたあの日。








直人はその手帳をすぐに閉じた。









あの日の事は直人にとって後悔でしかない。







百合子を自分の性の捌け口にしてしまったようで…。








子供を失ってしまった時と同じ後悔が直人を百合子を抱く事からまた遠ざけていた。






今の直人にとって百合子を抱く事は苦痛でしかない。






それなのに百合子はあの日からまた直人に抱かれ子供を再び持つ事を期待している。









それを知って直人の気持ちは押し潰されそうになった。







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