次の客を呼び出すカウンターを押す指をほんの少し止めて、背後で聞こえた声に気付かれないように目線を動かした。


企画グループの会議を終えてフロアに入って来た朝霧君が、うちのグループ長と何か話しているのが見える。
書類を捲りながらデスクに座ったままのグループ長に、わずかに身体を屈めて書類を指し示す指。
フッと浮かべる柔らかい笑顔。
言葉を紡ぎ出す唇。


後方で仕事をしてる先輩達まで、関係ないのにそんな朝霧君を振り返ってチラチラ気にしてるのがわかる。
それと同じ行動をしてる自分が『その他大勢』になった気がして、私は慌ててカウンターの向こうのロビーに意識を戻した。


――信じられない。


あの指も声も唇も、今は私の物だなんて。
そしてそんなことを無意識に考えてしまう自分の独占欲に正直驚く。


私だけだって言われたけど。
俺の全部をあげるって言われたけど。


お互いに『本気』を見せない関係。
それなのに独占していい訳がない。


一対一。
お互いに『ONLY』の関係。
『好き』って気持ちがある訳じゃない。
朝霧君にも言われた訳じゃない。
なのにまるで他の恋人同士と同じみたいで。


どこまで気持ちを傾けていいのか、加減がわからない。

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