糖度∞%の愛【改訂版】
糖度40%

早いもので、あの社内メールでの宣戦布告から3か月。付き合って4か月が経った。

食堂の件を知らなくて、あの社内メールで私と彼方の関係を知った上司や同僚からの、からかいの言葉もだいぶ落ち着いてきた。あのメールの日は、メールの内容をわざと芝居がかって目の前で言われたり、散々真帆にからかわれてしまったけれど。
真帆以外、そんな悪趣味なからかい方をする人はいなかった。でもそれが真帆じゃなかったら、手が出ていただろう。

私の身体を知る直属の上司は、あの日に『イイ男捕まえたな』とお褒めの言葉をいただいたっきり、今まで通り何も変わらず接してくれる。

是非とも真帆に見習っていただきたい。真帆は思い出したように、ちょくちょくあのセリフを言ってくるのだ。完全に暗記してしまっているらしい。

あの日から変わったことと言えば、彼方が部署を移動になったことだろう。私たちの部署から、システム開発部に異動になった。それは私との関係が公になったから、というのもあるけれど、事実上の昇格だった。前から打診はあったから、あれがいいきっかけになったのだろう。

彼方はもう、エリート街道まっしぐらだ。
私がこうやってコツコツ溜めていっている実績を、あっという間に抜かしていってしまうんだから、もう言葉も出ない。

それでもアイツの昇進には納得だった。あれだけの仕事の処理能力と、判断力・決断力があるんだから。彼方が仕事に対して真剣で、真摯に真面目に取り組んでいたことを、私は誰より近くで見てきたから知っている。私の下についていたのが不思議なくらい、彼方は上に立つ人だと思わせる何かを持っていた。

「ダーリン、あっちでも優秀みたいだね」

やっぱりいつもの食堂で、真帆はA定食のブリの照り焼きを咀嚼しながら彼方の話題を口にした。またお決まりのからかいのセリフじゃなかっただけ、マシかもしれない。

「……だーりん、って……」

苦笑いしか返せない。
そこで“そうなの。私のダーリンって最高でしょう?”なんて、極上スマイルつきで言うべきだろうか。そうやって開き直れば、真帆にからかわれることもないのだろうか。
いや、そう返したら返したで、真帆に本気で絞められそうな気がする。
さわらぬ神にたたりなし。真帆の言葉は、右から左に受け流すのが一番だ。
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