糖度∞%の愛【改訂版】
糖度60%


今日でこんなバカげた日々が終わるはずだった。

トイレに行くのに携帯を忘れた俺も、バカだったのかもしれない。でも、勝手に他人の携帯に出ることが非常識なことだと、なぜ分からないのか。
分からない奴だからこそ、俺はいまこんなことになっているわけだけれど。それでもどうしようもない怒りが、ふつふつとわき上がる。

俺の携帯で話していたそいつに、声をかける。面白いくらいに狼狽えて、焦って携帯を後ろに隠した。
隠したって俺の携帯に出ていた事実は隠せない。なのにそんな意味のない行動をするこの女は、どこまで俺をイラつかせれば気が済むのだろう。

そんな常識のない女だからこそ、コイツは沙織に嫌がらせをして、変な理屈をこねて俺の傍にいた。それを断れないのは、その理屈に納得したからじゃない。

確かに俺自身にも非があると認めざるを得なかったからだ。

でも、もう十分その役目は果たしたはずだ。
だからこうして仕事終わりにコイツを呼び出して、それを切り出した。

案の定ごねにごねて、埒が明かなかった。でも俺はこれ以上ひくつもりもなくて、ヒートアップしそうな自分を諌めるために、トイレに立った途端にこれだ。

この女がこうやって俺に執着するせいで、沙織は俺をあからさまに避けだした。
電話も出てくれないし、メールも返ってこない。そんな状態の俺の精神的ダメージは計り知れない。
唯一の癒しは、今目の前にいる女が持つ、俺の携帯の待ち受け画面にいる沙織だけだった。

初めて彼女の家に泊まった日、隣には沙織が当たり前のように寝ていた。その無防備な寝顔が愛しくて愛しくて。つい許可なく撮ってしまったのは仕方のないことだと思う。でもそれが今、俺の唯一の癒しになっているんだから皮肉なもんだ。

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