神様の願いごと
◆クロを探して


何でこんなことをしているんだろう。

なんて、考え出すと頭がおかしくなりそうだから、もう、何も考えないことにした。


土曜日。

学校もないのに、わたしは早朝にケータイのアラームで目を覚まして、朝から1匹の猫を探していた。

まったく知らない人のまったく知らない猫だ。どこに居るかなんてまったく思い当たりもしないから、あてもなく、ひたすら町の中をさまよっている。


「やーい。クロちゃん。どこだい? 怖くないから出ておいでー」


公園に生えていたねこじゃらしをふりながら、道路脇の溝や日当たりの良い空き地を渡り歩いた。

模様に特徴のある猫だから、道行く人に見かけなかったか訊ねてみたり。小学生をお菓子で釣って一緒に探させてみたり。

だけど当然、見つかるわけもない。


野良猫やワイルドな飼い猫ちゃんならときどき見かける。どちらかと言えばこの町は、猫が多い場所だとも思う。

しかしながら目的のクロは一向に姿を現さない。

もう八方塞がりだ。

というかそもそもあてもない中から猫1匹を探し出せっていうのがまずもって無理な話であって。


「もういやだ!」


投げ出すのも、当然のことだと思う。
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