本当の俺を愛してくれないか?
だってそうだろ?
失恋してだいぶ経つって言うのに、いまだに菜々子のことを立ちきれずにいるんだ。
なんだか会わせる顔がない。


「ははーん。さては翔太、菜々子に会いたくないから帰りたくねぇだけだろ?」


「べっ、別にそういうわけじゃー...」


「なーに今更私にまで嘘つくんだよ!全部知ってんだから、隠すことねぇだろ?」


「...それは、そうだけど...」


俺の様子を見て呆れたように溜め息を漏らす桜子。


「まぁ、さ。無理に早く忘れろとは言わねぇけどそろそろ新しい恋っつーのをしてもいいんじゃね?うちらもう若くねぇんだしさ」


「...そんなの、俺が一番よく分かってるよ」


ずっと前から分かっていた。


「ならさっさとー...!」


「だけど無理なんだよ」


「えっ...?」


思わず桜子の声を遮ってしまった。


「だってそうだろ?菜々子以上に俺を理解してくれる女なんていないだろ?
昔からそうだった。可愛いものが好きで料理やお菓子作りが趣味の俺を何の偏見もせずに接してくれたのは、菜々子だけだった。...桜子にもだって、そうだろ?」


「そりゃまぁ...。それは私にだって同じだよ。菜々子だけだった。こんな私を一番受け入れてくれて友達になってくれたのは」


そうなんだ。菜々子はそういう女だった。
だから俺にとっても桜子にとっても菜々子は特別な存在で大切な存在だった。
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