もしも私が―。
はじまりの日
 その日の午後、学校から帰路につく途中、突然雨が降り出した。

「何だよ!雨なんて天気予報で言ってなかったじゃん!」

 辺りを見回すと、通りの外れに廃工場があった。
 私は憤慨しながらそこに駆け込んだ。
 工場の軒先で、雨宿りをしながら制服をはたいた。
 小さくため息をついて、独り言。

「通り雨かな?夏だから仕方ないか……ああ!ついてない!」
 
 その時だった。

「ぎゃあああ!」

 工場の中で、男の悲鳴が聞こえた。雨を裂く様な、鋭い悲痛な声。

「……何?」

 驚きと共に、不安が生まれた。だって、どう聞いたって、ただ事じゃない叫び声だったもの。
 私の後ろの工場のドアに手をかける。ゆっくりと引くと、鈍い音と共にドアが開いた。
 私は、ゴクリとひとつ唾を呑むと、不安と好奇心、恐怖と期待が入り混じった複雑な気持ちで、工場の内部へ入っていった。


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