体育館12:25~私のみる景色~
私のみる景色にはいつもあなたがいました

 ――――――私のみる景色には、いつだってあなたがいた。


 冬休み明け、私はもうずいぶんと元気になっていた。


 それは決して失恋の痛みを乗り越えたから、というわけではなく。


 私を支えてくれる人が、勇気を与えてくれる人が身近にいるということを、身をもって感じることができたからだと思う。


 やっぱりまだ、佐伯先輩のことを考えるだけで息が詰まるほど苦しくなるし、会いたいな、話したいな、なんて思う。


 往生際が悪く、私はまだ諦めきれずに、佐伯先輩への恋心を大事にしまいこんでいるままだ。


 でも、失恋を受け入れ始めているのは事実。


 だからと言って、好きの気持ちがなくなるわけではないんだけれど。


 しばらくの間喉を通らなかったご飯も今はちゃんと食べているし、顔色もいつも通り。


 髪の毛、肌のケアもしっかりしている。


 ふと思いついた自分磨きを、ずっと続けてきた。


 それは、『亜希を信じてる』って、凉がくれた言葉のおかげかもしれない。


 冬休み、みんなに心の内をすべて吐き出して。


 そして、私の中に疑問が残った。


 ずっと考えてきたけどわからない、難題。


 それは、凉が残したもうひとつの言葉。


『どうして“どうでもいい”ことのはずなのに、佐伯先輩はそんなに感情を乱したんだろうね?』


 この言葉について、何度も何度も繰り返し考え続けた。


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