身代わり姫君の異世界恋綺譚

鮮血

陰陽師たちを部屋に待たせて清文は清蘭の元へ行った。

『父上様。何用じゃ?』

苦虫を噛み潰したような父の顔を見て清蘭は赤く塗られた口角を上げた。

「お前か? 都の物の怪を操っておるのは」

『さすが父上様じゃ』

「この部屋から大量の陰の気が放出されておるからな」

亡くなる前よりも妖艶になった清蘭の顔を睨む。

『わらわを受け入れないからじゃ』

「……清蘭、お前は死んでいるのだ。生に執着するでない」

『フフフ。生に執着しているのではない。わらわの目的は紫鬼様だけじゃ』

紫鬼の名前を口にする時だけは恥らう乙女のような顔になる。

「物の怪を都から去らせよ」

『もう遅いわ。わらわの力なくても勝手に動き回っておる。フフフ』

その得意げな姿に呪術を唱えたくなる清文だった。

< 294 / 351 >

この作品をシェア

pagetop