身代わり姫君の異世界恋綺譚

阿倍 清文

次に目を覚ました時は、再び部屋の灯りが点けられおり、外が暗い事を知った。

「ずいぶん寝ちゃったんだ……」

空腹を感じた真白は身体を起こした。

――あれ? 身体が軽くなったみたい。

コロン

手に何かがあたり畳へそれが転がった。

「梨……」

梨を見て今朝、紫鬼にしてもらった事を思い出してドキッと心臓が鳴った。

――私、欲求不満みたいじゃないっ。
キスだって経験したことがないのに。背中を紫鬼の唇が……。

思いだすと熱くなり、顔の前でパタパタと手で仰ぐ。

赤くなったであろう顔色を鎮めようとした。

「紫鬼は本当に人間じゃないの? 鬼って……私が思い浮かべる鬼は、桃太郎に出てくる赤鬼と青鬼の頭に角が生えている鬼。紫鬼は人間の姿で……本当に鬼なのかと疑ってしまう。でも現に私の痛みを治せている。人間ならそんな事は出来ない。そうなのかもしれない……すごく美形な鬼だよね」

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