身代わり姫君の異世界恋綺譚
「陰陽師寮にも病気の者は出る。どうやら真白はそういう者の穢れをすべて受け入れてしまうようだ」

――穢れって……なに?

紫鬼と清雅が話をしているのを聞いていた真白は眩暈を堪えて、うっすらと目を開けた。

「つらいのだな……」

紫鬼の手が真白の額に触れた。

――冷たくて気持ちいい……。

「紫鬼! 真白は大丈夫なのですか?」

誤解だったとわかった途端に清雅がすまなそうな顔になった。

「もうしばらく私といれば、明日には起き上がれるだろう」

紫鬼は何かを唱えた。

目を開けていた真白の目蓋が閉じてすーっと眠りに引き込まれた。

紫鬼は術をかけて眠らせたのだ。

「では紫鬼、真白をよろしく頼みます」

清雅はそそくさと出て行った。

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