【きちんとお付き合い】
ミスターヴォルフはそう仰った…どうして私なんかと?今日一緒だった人は綺麗な人だったのに。
物珍しいだけなら私には関わって欲しくない。なのに……。

【あなたの為なら…私は紳士にも、盗人にも…獣にもなれます】
【ならば私を見て下さい…】
【あなたとの時間を確保する為なら睡眠時間も惜しくない…あなたの時間を私に頂けないだろうか?】

じっと私を見つめる碧眼が強く私を惹き付ける…反らしたいのに、反らせない。

「ミス遠野…答えは急ぎません。ですから…考えて頂けませんか?」

真摯な瞳に戸惑いながらも、私はゆっくり頷いた。


ホテルに着くまで、彼は私を優しく見つめながら明日からはガイドではなく友人に昇格だと、微笑んでいた。私は複雑な心境だった。明日以降はまた一緒にどこかへ出掛けようって言ってくれたり、観劇にも誘って下さった。

劇場で彼を見掛けた時、隣にいた人は恋人なんだと思った。
並んだ姿は華があってとても目を惹いた。劇場では誰もが彼を見てた。彼の容貌を引き立てる洗練された立ち居振る舞い。こんな素敵な人に、私は会った事もない。
ストレートな物言いと物腰柔らかいエスコート…そんな事されたら誰でも期待しちゃう。私だって期待…しかけた。今日のあの姿を見るまでは……。

私はその時、高校の頃クラスメイトだった和明に偶然会って。一緒に回ろうかって話をしてた。
けど…何を思ったのか和明は送って帰ると言った彼に遠慮なく便乗した。和明に便乗されると私は断りにくくなる。彼を嫌っているわけではないけど、何だか見つめられると居心地悪いような、落ち着かないような気分。
今もそう…リムジンの正面に座る彼から視線を反らそうとする度に窘められるように呼ばれて…。

「ミス遠野…反らさないで、私を見て」

俯いたり視線を反らしたりすると、そう言われながら頬に手を伸ばされて、するりと滑らせた指先が顎を持ち上げる。

「ミス遠野…ファーストネームで呼ばせて頂けませんか?」
「ぁ……はい」
「…ありがとう、嬉しいよ…クルミ」

【クルミ】って…呼ばれるのは初めての事じゃないのに…彼に呼ばれるだけですごくドキドキする。和明に呼ばれても何ともないのに…彼から呼ばれるとダメ…。

「クルミ…」
「はい、ミスターヴォルフ」
「私の事はウィリアムと…呼んでくれないか?」
「ぁ…」
「あなたの声で…呼ばれたい」
「…ウィリ、アム…」
「ああ…クルミ」

うっとりと私を呼び返す声音…そんな風に…。

「クルミ」

名前を呼ばないで――。

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