【実話】最愛の魔物

祖母

母親の母は、ちょっと変わったひとでした。大人になって考えると、いわゆる【昔の人】だったのかもしれません。

祖母は、自称、群馬の豪農の家のお嬢さんだったそうです。私が物心つく前は、よく、祖母が幼い頃には、女中さんが祖母に日傘を差してくれたものだったとか、見える山は全部自分の家の土地だったとか、そういう話を聞かせてくれたものでした。
幼かった私は、素直に、そうか、おばあちゃんはお嬢様だったのかとか、今もそのままそこに住んでいてくれたら自分もお嬢様だったのに、とか、想像にふけっていました。でも、その話ではいつも、祖母がどんな風に東京でくらすようになったのか、という話が抜けていました。

随分大きくなってから私自身が母や、祖母の弟たちに聞いた話によると、本当は祖母どころか、その母親、つまり私にとってはひいお婆ちゃんの代の時に、私の一族は上京してきたとのことでした。
話をまとめると、もはや始まりは戦前で、群馬の豪農だった曽祖父が、随分ハイカラな人だったそうで、田舎が嫌で実家を飛び出して、東京に出てきてしまったのが始まりでした。
曽祖母はとても真面目で良く働く人で、お針子の仕事をして家計を支えました。その反面曽祖父は浪費家で、その時代なのにある日突然家に鹿の敷物が届いたとか、置く場所がないのにベッドを買ってきたとか、そういう変わった逸話が沢山ある人でした。

そういう夫婦の元に生まれたのが、私の母親の母親、つまりは私の祖母です。祖母は、どうも自身の父親に似たようで、オシャレで、贅沢が好きでした。
晩年は遺族年金で綺麗な着物をきて好き放題していましたが、曽祖母に随分厳しく躾けられたようで、縫い物は本当に上手で、自分の着物は最後まで自分で塗っていましたし、私の記憶の中で祖母はいつも縫い物をしていました。
母が何度か、「おばあちゃんのお母さんは厳しい人で、縫い目がきたないと、糸を引っこ抜かれた。と悔しそうに話していたよ、よっぽど悔しかったんだろうね」と言っていました。❶^っっっっっC
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