罪でいとしい、俺の君
4
ホテルに戻ってから、またリアを抱いた。何時間もベッドから降りる事なく触れ合っていた。リアはまだ戸惑いを隠せずにいるようだが、それもあと暫くの事だと思っていた。

帰りの機内でリアはまた疲れたのかすぐに寝入っていた。その寝顔に穏やかな気分になりながらも、井原から届いたメールや添付資料に目を向ける。
これからは今まで以上にリアとの時間を作る努力をせねば…と、意気込みながら……。



空港には井原が迎えに来ていた。俺たちの微妙な変化に気付いたようだ。リアは井原にと土産を買っていて、手渡された井原はにこやかに受け取り、ちらりとこちらに目をやった。
そのくらいは我慢してやる。自宅に直行しながら、留守中の仕事の話が始まる。

「わかってるだろうけど、明後日はうちの創社記念のパーティーがある。関連会社や取引先が集まるからな」
「ああ…リアに一着用意させておけ。色は赤で、サイドにスリットのあるものだ」







創社記念…関連会社もくるのに私を連れてくの?こういう時って彼女連れてくよね?これも償い?
私にちゃんと償ってますよって、周りにふれ回る為?

「ビルから聞いた。向こうでも着せたらしいね。リアちゃんは可愛いから何でも似合うし、着飾り甲斐があるな」
「…お前に見せる為じゃない」
「はいはい。明日には届けるよ」
「ヘアメイクはこの前のでいいぞ。よく似合っていた」
「…うん」

満足そうに笑う甲斐征志郎…何がそんなに嬉しいの?私を手なづけてますってアピりたいから?
何で私とシたの?彼女の代わり?私が甲斐征志郎を好きになったのがわかったから、仕方なく?
思い出に…って思ったけど何度もシちゃったら、余計辛くなっちゃったよ…。
すごく優しく名前を呼ばれて、抱き締められてキスされて…離れらんなくなっちゃう……。
助けてよ…こんなの…躯だけとかそんな…そんなの私には出来ないよ!甲斐征志郎みたいに経験多いわけじゃないんだからっ――。






創社記念パーティー当日。
リアの不安要素になっている甲斐運輸の人間は一人だってこない。事件の後すぐに社長は解雇、他無関係な従業員は子会社の運輸事業会社に異動させた。
この場を以て公にリアを婚約者として認知させる。リアにも俺はKAIコーポレーションの代表取締役…社長である事をちゃんと打ち明けて、これから先も俺と暮らしていく事を承諾させる。
揺れているリアに対して卑怯なやり方かもしれないが、リアが俺以外の誰かと…何て事にさせるつもりは毛頭ない。勿論、俺が他の女と結婚する事もあり得ない。
会場に入る前にリアには先に話しておかなければ……。

「リア、黙っていたわけではない。いずれ話すつもりだった」

緊張の面持ちで俺を見上げるリア…掌で頬を包む。

「俺はこのKAIコーポレーションの…」
「甲斐社長!お久しぶりです」
「ぇ…甲斐…社、長…?」
「会場にまだお見えでないので探しました」

最近取引を始めたD物産…リアがデイトレードで見いだした企業だ。俺はそこの有力な株主とされている。

「おや、お連れ様がおいででしたか。これは失礼致しました」
「いや…リア。D物産の柏木社長だ」
「…は、初めまして…」

まずい…他人の口から発覚するほど最悪な事態などない…予想だにしなかった……。

「柏木社長、彼女が俺にお宅はこれから伸びると助言してくれたんです。個人的にデイトレードをしていましてね。いい目を持っている」
「そうでしたか!失礼ですが、お名前を伺ってもよろしいですか?」
「…瀬名、リアです」
「瀬名様……お会い出来て光栄です。瀬名様のお陰で我が社もKAIコーポレーションのような大企業と取引が出来るようになりました」
「…いぇ……」

ショックを引き擦っているのが見える…何とか話を……。

「では甲斐社長、瀬名様。また会場で」

柏木社長が会場に向かってすぐ、リアに向き直る。

「リア、俺は……」
「社長…だったんだ……ね」

泣きそうな声、表情…。違う…こんな形では…。

「征志郎、いい加減会場に入れ。リアちゃんも行くよ」

強引に連れ込まれてすぐ、俺は取引先や関連会社の社長や重役に取り囲まれた。リアは井原と少し離れたところにいる。井原が傍にいるなら今のところは安全か…。









「…社長…だったの?」
「…そうだね…騙そうとか考えていたわけじゃないんだ。それだけはわかってやってくれないか?」
「…でも…もう一緒には…いられない」
「リアちゃん!?ちゃんと話をしよう?征志郎は……」

事情が…ある。まだ誰にも言ってない、本当の事。

「それも…ショックだけど、それだけじゃないから…もういられない」
「…その他の理由を訊かせてもらえないかな?征志郎がこうしたのにもちゃんと理由があるんだ」
「…聞いても変わんない……それに…私も言ってない事、あるし…それ聞いたら引き留める気もなくなるよ」

井原さんがまた何かを言おうとする前に、俯いた視界に派手なつま先がいくつか見えた。

「あらやだ…被害者遺族はこんなところにまで呼んで頂けるのね?」

顔を上げたらケバくて派手で露出の多い女の人たちに囲まれて…。

「ご両親が事故で亡くなったのよね」
「しかも三年前にはお母様が甲斐運輸のトラックで半身不随で、今度はご両親共なんて…お可哀想」
「征志郎様こそお可哀想だわ」
「こんな子供のお世話を押しつけられてね?ご一緒に暮らしてらっしゃるそうよ?」
「真面目な方ですもの、征志郎様。やっぱり可哀想に思われたのね」
「親族の誰も引き取らなかったみたいだもの」
「責任もあったんでしょうしね?」
「我が儘言いたい放題で楽しかったんじゃなくて?それも今日まででしょうけど」
「そうね!このパーティーで婚約者を発表なさるそうだし」

【婚約者】…この人たちに言われたどんな言葉より、一番聞きたくなかった…。甲斐征志郎の奥さんになる人……。

「あらあら、泣いちゃったわ」
「どうしたの~?パパとママが恋しいのかしら?」

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