ただ、名前を呼んで
・親心
僕が祖母の小さな腕の中で泣いていると、祖父が様子を窺うようにキッチンを覗いた。
困惑した表情を浮かべたものの、何かを察知したのか平然と声をかける祖父。
「春子、鍋がふいてるぞ。」
コンロ上に目をやると、魔女のスープのようにぶくぶくと沸き上がる味噌汁があった。
慌てて火を止める祖母。
僕が祖父と目を合わせると、祖父は困ったような不器用な笑みを見せた。
食後、僕はまた自室には戻らずなんとなくソファに座る。
祖父が僕の隣に腰を下ろした。