ラブバトル・トリプルトラブル
愛するということ
 沙耶に説得され、正樹は美紀を受け入れようと決意した。


結城智恵や愛しい妻の長尾珠希がもし美紀の身体に憑依していたとしても……美紀には違いない。


(俺は美紀が好きだ! もう迷わない! もう離さない! そうだ。きっとこの感情こそが愛すると言うことなのだ。俺は美紀を心から愛しているんだ……)

美紀を思う度心が揺さぶられる。
恋人にしたい存在でもあったのだが、愛しい我が子でもある事に変わりはない。
だから正樹は激しい感情を封印し続けてきたのだ。

どんなに苦しかったか。
どんなに美紀の存在が重くのし掛かっていたか。
正樹は今更ながらに、悪戯好きな珠希の魂を其処に感じていた。




 一時の感情に負けては駄目だと思い、美紀を拒み続けてきた。

でもそれが沙耶の言葉で白日の元にさらされた。


(何故今まで気付かなかったのだろう? でも美紀は本当に自分を好きなのか? もしかしたら、珠希と智恵が美紀に憑依して操っていただけではないのだろうか? 美紀、本当に俺でいいのか?)

答えは出ない。
それでも正樹は美紀に告白することを決めていた。




 沙耶に言われて気が付いた。
珠希が美紀の中で生きていることを。
珠希の誕生日に、きっとその存在を示したかったのだと言うことを。


(ごめんな。ずっと気付いてやれなくて)
正樹は、珠希の遺影に誤った。


(美紀を愛しても良いかい? 心の赴くままに。俺、駄目なんだよ。美紀にお前を感じて以来、美紀のことが頭から離れなくて。だって美紀はお前そのものだったから。だから迷ったんだ。だから恋しくて堪らなかったんだ。でも、そんなのでいいのか? 本当に美紀を愛しているって言えるのだろうか?)


美紀を愛していこうと決めたくせに……
正樹の決意は早くも揺らぎ始めていた。




 現役時代。
大人気だった正樹。
プロレスラーらしからぬ風貌。
アイドル系、ビジュアル系ロック系など言われ持て囃されたこともあった。

でもその顔に似合わないタフさ。
それは珠希の献身で培われていたと言っても過言ではなかった。

だから余計に、大勢のファンの女性が珠希に嫉妬したと言う。

長尾正樹と珠希夫婦は、公私共に認めるラブラブカップルだったのだ。


でも珠希に触れた人は、反対に正樹を嫉妬したと聞く。

一途に正樹を愛する珠希。
その誠実な人柄に惹き付けられたのだ。


だからこそ、美紀は珠希の夢を追ったのだった。


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