ラブバトル・トリプルトラブル
真実を探して
 正樹は結城智恵の過去を調べようと児童養護施設へ向かった。
原則一歳以上の幼児を養育する施設で、平成十年に改名されるまでは養護施設。
それ以前は孤児院とも呼ばれていた。


正樹は市役所で、美紀と自分の戸籍謄本を取ろうと申し込み用紙を二枚書いた。


「御家族ですか? それでしたら、世帯主の方だけ申請していただければ御家族全員の謄本をお出し出来ますが?」

用紙を見た役人はそう言った。


「あ、それでお願い致します」
正樹はそう言いながら、前にも同じようかことがあったと思い出していた。


そう……
それは美紀が本当は養女なのだと知った、あの高校への入学願書の添付資料だった。
今はそれも懐かしい思い出だった。


その足で結城智恵が中学時代をすごした施設へ向かった。


実は美紀を養女にする時に、詳しく調べなかったのだ。

珠希は美紀が愛しくて、手放してたくなかった当のだ。


美紀を胸に抱いて授乳させた時、既にその親子関係は樹立していたからだった。
両親共に他界していて、親戚縁者の居ないことは解っていた。
だから自分達の子供として育てたいと懇願したのだった。




 持参した謄本を出して、自分が育てている娘の親がこの施設出身の結城智恵だと名乗った。


謄本と免許証を見て施設長は確かに本人であることを確認した。

正樹は目的は親捜しのためと打ち明け、保管されている資料の閲覧を請求した。




 「えーっと、結城智恵さん…… あ、あったわ。こちらの方ですか?」

施設長が差し出したアルバム。そこには中学生の彼女がいた。

「私の母が名付け親なんです。出身地が茨城の結城でしたから。実は母は此処へ移る前は乳児院に勤めていました。そこで結城智恵さんと出会ったようです」




 「彼女はいつも、『本当の出身地はコインロッカー』って言ってて。詳しい話を伺いたくて来ました」


「ああそれなら」

施設長は暫く席を外し、結城智恵の資料とアルバムを持って来た。


その中に挟んであった古い新聞記事を正樹に差し出した。
それは正樹の産まれた年・昭和四十五年の物だった。


"コインロッカーに乳児"のタイトル。

「この乳児が結城智恵さんです。この年大阪万博があって、コインロッカーの需要が高まり沢山作られたと母に聞きました。でもこのようなケースも発生し、母は嘆いていました」

施設長はそう言いながら、当時の彼女の写真付きの資料を出してきた。


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