俺は間宮との約束の為に、朝会った喫茶店へ向かった。
「やべ、すげぇニヤけてる。俺…」
片手で顔を隠し、若干俯いて駅までの道を歩いた。
璃香のことが、ずっと好きだと思っていた。
忘れられないと思っていた。
けど、違ったんだ。
俺はいつから、朱里のことが好きだったんだ?
もしかしたら、一年前俺と璃香が別れた後から好きだったのかもしれない。
朱里と仕事がしてみたいと思ったのだって、本当は自分の傍にいてほしかっただけなのかもしれない。
本気で朱里のことを愛おしいと思った今、間宮には渡したくないと思った。
本当はホテルに行こうとした時に、止めておけばこんなことにはならなかった。
けど、止めていたら俺は朱里への思いに気付くのがもっと遅れたのかもしれない。
止めていたら、また朱里を傷つけるだけで朱里が俺に対する気持ちも聞けなかったのかもしれない。
初めて入った、朱里の部屋。
俺の写真があると言った、寝室。
朱里の温もり。
俺の為に作ってくれた、チャーハン。
途中何度か入れ忘れがあったらしく、軽く飛び跳ねていたけど。
そんな朱里も、すごく愛おしいと思った。
これからもずっと俺だけの為に作ってくれないかと、本気で思った。