sweet wolf

狼なんて忘れてやる








あたしはそのまま教室に戻った。

転校早々、授業に遅れてくるあたしを、クラスのみんなは興味深げに見た。

そんな視線をものともせず、何事もなかったかのように席に座るあたし。





「栖本、遅刻か?」




先生がそう言うものだから、




「さァーせん(すいません)」




と適当に謝っておいた。



世話焼きの直樹が、




「もうっ、何してんの?」




あきれたように言うから、




「めんご」




わざとそう言ってやった。



元はといえば、あんたの兄貴が悪いんじゃん。

心の中でつぶやくあたしに、




「53ページだよ」




出た、直樹のお節介攻撃。

反抗する元気もなく、




「はいはい」




仕方なく教科書を開けた。




< 57 / 312 >

この作品をシェア

pagetop