お茶の香りのパイロット
紅茶が血色に染まる時
フィアは夢を見ていた。

巨大な何かが自分に質問を投げかけてきている。


「おまえは軍人か?」


「いいえ、まだ学生よ。」


「学生なのに追われているのか?」


「ええ、詳しいことは私にもわからないけれど、ウィウス軍の偉い人とタンガの政治家が大陸をみんなまとめて支配するみたいな話し合いをしてたのを偶然、立ち聞きしちゃったのよ。」



「ほぉ・・・。タンガとウィウスはつながっていたんだな。」


「ええ、たぶんあの人たちの仲間が王様や王族の方々を亡き者にしようとしてたんだと思うの。」


「おまえはウィウス軍の予備学校へもどりたいのか?」



「もう戻れないわ。入学して仲良くなれそうな人はいたけれど、もう私は反逆者扱いかもしれないし。
それに、ここまでくる間に防衛軍の予備学校生がかなり殺されたニュースもきいたわ。

私もきっとその仲間入りさせられてしまいそうよ。」



「おまえは王族には知り合いはいないのか?」



「いないわ。王様と王妃様くらいならお顔は存じていたけれど、もう・・・この世にはおられない方々だし、王子様や王女様とは面識もなく、どこかへお逃げになっておられるか、もともと留学されているかもわからないわ。」


「おまえは今、私と話をしているな。
会話はよく聞き取れているか?」


「ええ、普通に会話できていると思うけど。

ところで、あなたは誰なの?
どこから話しかけてるの?」


「私はラーガ。話しかけているのは主の胸から伝えている。
そして、おまえが目覚めた後で近いうちに私と対面することになるだろう。」


「ラーガ、あなたは何者なの?」


「私はアルミスの分身であり、アルミスを守るもの。
アルミスは私を作った。

そして近いうちにアルミスはおまえの分身を作り出し、私とともに戦うことになるだろう。」


「どういうこと?
あなたは作られたもの?

アルミスって誰なの?
ねぇ、答えてよ!アルミスってどこの誰なのか教えてくれないとわからないじゃない!

アルミス!アルミスってどんな人なのよーーーー!」



そうフィアが夢の中で叫んだ瞬間、何者かがフィアの両頬をペチン!とたたいてフィアは目が覚めた。


「アルミスってこんなヤツですよ。」


フィアの目の前に白い夜着姿の男がのぞきこんでいた。


「えっ!!きゃあーーーー!どうして私と同じベッドに入り込んでるのよ。いやらしい!!」



フィアは力いっぱいアルミスの胸を押したため、アルミスはベッドから落とされてしまった。


「いってぇ・・・いたたたた・・・ひどいなぁ。
これでも君の命の恩人ですよ。

ここは私の部屋で、1階は私の経営する喫茶店ですけど・・・覚えてないんですか?
助けを求めながらやってきて気を失ったんですよ。」



「えっ・・・そういえば。
あの・・・えっと、ちょっと私がここまで来た途中の部分を見せてもらってもいいでしょうか?」


「ええ、かまいませんよ。」


フィアは店の様子を見て、倒れこむ前のことを思い出した。


「ごめんなさい・・・転がり込んできたのは私なのに。
本当に申し訳ありません。

私は・・・」



「事情はだいたいわかっていますから、もういいです。
とりあえず、お茶をいれますから、遅めの朝食にしませんか?

今日はお店がお休みなんです。
だから、いちばん人気のコーヒーは出来ないんですけどね。」


「あの、そんなおかまいなく・・・。
私は、すぐにお暇しますし。」


「逃げるところもないのに、どこへ行くんです?」


「えっ?」


「ご飯が済んでからお話があります。
きっと、あなたはここに居たくなると思いますから、少しの時間、私につきあってください。」


「何でしょうか・・・?」


「お楽しみです。ふふっ」
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