お茶の香りのパイロット
自室にもどるときに、フィアはロビーでカイウに捕まえられ、説教された。


「すごく心配したぞ。どこへ行って何をしていたんだ?」


フィアは包み隠さずすべてをカイウに話した。
カイウはかなり驚いていたが、フィアの様子からして嘘をついているわけではないと悟り、それ以上は何も咎めず自室で休むように言ったのだった。





翌朝、暗いうちに早い朝食を済ませて、フィアとカイウとディーナはアルミスの待つ基地へと戻って行った。

ディーナは移動中ほとんど2人と会話をしなかったが、カイウにアルミスとどのくらい親しいのかを質問した。


「俺たちは学生のときからの付き合いだ。
俺は数字・・・とくに金の計算に強いけど、アルミスはそっちの方は疎い。
けれど、彼は物を作るのがうまいし、化学や物理はすごかった。

まぁ、その頃からの持ちつ持たれつが続いているな。
俺にとっては彼が王子から王様にならなくてありがたいと思ってる。
不謹慎な話だろうけど、彼もまたひとりの科学者の方が気にいっている。」


「そうか。アルミスは本当に天才なのだな。
尊敬に値する彼のために、私も全力でフォワードの役目を果たさねばな。
いろいろ世話になりますが、よろしくお願いします。」


「いや、俺より彼女にいうべき話だよ。
フィアはアルミスと同じ援護組だけど、チームでは君より先輩だから。」


「あ、私はそんな先輩なんて・・・。」


「順番からすれば先輩だな。だが、実力ですぐに立場は変わると思うがよろしく頼む。」


「はぁ、こちらこそよろしくお願いします。」



カイウはディーナの態度から、これから何か騒ぎが起きそうな心配にかられた。

そして、その心配は到着してすぐに的中してしまったのだった。



アルミスが直接、入口で出迎えると、それまでずっと無口であまり動きをみせなかったディーナが一目散に走り出てアルミスに飛びついた。


「アルミス様!お久しぶりでございます。」


「うわっ・・・な、何なんですか・・・君は?」


「ひどいです。お忘れになったのですか?
連絡だっていっているでしょう。ディーナです。
マーティーの妹のディーナです。」


「ディーナって・・・どうしてそんな男の軍服をきているんですか?」


「私が新型機でフォワードをやってあなたをお助けする決意ですわ!」


「それなんだけどね・・・君にはお兄さんのところへもどってもらおうかと思っている。」


「ど、どうしてですか?私はもともと空軍パイロットです。
覚悟も腕も確かですよ。

女性がどうのこうのってこのフィアさんよりも私の方が実力で勝っているのに、おかしいです。」



「いや、フィアの場合はアフィニと相性がいいですし、ラーガともすぐ仲良しになったんです。
それに、ここから出せない事情があります。」


「じゃ、私にアフィニとラーガを会わせてください。」


「いいけど・・・何となく君はそっちの素質はないように思えるのだが・・・。」


「やってみなくてはわかりません!」



ディーナをラーガのところへアルミスが連れていき、しばらくしてアルミスはディーナに何か聞こえたかを尋ねたがディーナは何も聞こえないと答えた。


すると、フィアは不思議そうな顔をしてこういった。


「ずっとラーガはディーナさんに挨拶をしていたのに、聞こえないんですか?
アフィニは少しご機嫌ななめです。
私の意識が少し使われているのに申し訳ありませんが、アフィニは無視されたと誤解していました。」


「そうですね。けっこう2人ともディーナに呼びかけていたんですけど・・・聞こえなかったんですね。」
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