お茶の香りのパイロット
ちょうどその頃、ラーガの予想どおりディーナはある悪い知らせを受けていた。


「な、何ですってぇーーーー!兄さん、それほんとなの?
嘘の情報とか敵のワナじゃないの?」


「残念だが、ほんとなんだ。
君の支援していたデイジーハウスが砲撃されて子どもたちもスタッフも全員死亡なんだ。」


「リリーやケイも・・・いないの?
あの子たちまだ小学生なのよ。

平和になって私が独身だったらあの子たちだけでも養子にしようって思ってたのに・・・。


「情報を事前につかめなくてすまない。ほんとにごめん。
狙われる理由なんてない場所だと思ってたから油断した。

頼りにならない兄ですまない・・・。許してくれ。」



「兄さんのせいじゃないわ。私だって前もって攻撃されるなんて思わなかったもの。
でもどうして・・・?
弱者をどうして狙うの?
お金持ちを狙う方がいいのに。」


「それはな・・・どうやらおまえがアルミスのところでパイロットになったことに反対した輩がいるってことみたいなんだ。」


「なんですって!!私は軍隊にもいたわ。そのときはこんなことなかった。どうして?」


「ロボットだよ。アルミスはロボットを設計して近いうちに、機動型ドールに対抗しようとしているだろ。

あれで勝ったら武力で支配されるとか勝手な妄想にとりつかれている人間がいるってことだ。」



「そんな・・・武力で支配することなんてアルミス様がするわけないのに。」


「葬式の準備や施設のこれからのことも検討しなきゃならないので、このへんでな。
悲しんでもいいが、おちこむなよ。

おまえにはやらなきゃならないことがあるんだからな。」


「リリー・・・ケイ・・・みんな・・・。ああ・・・わぁーーーーー!
みんな私のせいだわ。私がアルミス様に会いたいなんて思わなければ・・・。

軍をやめて事業だけやっていたら・・・みんな死ななくてよかったのに。
私が・・・私のせいで、とんだとばっちりで。ごめん、ごめんなさい。うう・・・。」



ディーナは自室で半日泣き続け、そしてふとリリーにもらったプレゼントを鞄からとりだした。


(リリーが始めて私にねだってくれたおもちゃの指輪。
色違いで買って、リリーは本当は赤が好きなのに、私と交換したいって自分は緑をはめて私に赤をくれたわ。

いずれ本物のルビーを買ってあの子が大人になったら買ってあげたかったのに。
なのに・・・買ってももう渡せないよぉ!!!!)


再び泣き始め、ディーナは声も出なくなり、涙も枯れ果てた頃、耳に何かが聞こえてくるのを感じた。


「ディーナ!あなたの願いはかなえました。」


「えっ・・・!?誰だ。私を呼ぶ声は・・・願いをかなえただと?
おまえは誰だ!答えろ。」


「私はディッド。あなたの機動型兵器です。
意識は先週からありましたが、あなたには私の声は届かなかったのです。
しかし、今夜やっと、あなたと通じあうことができました。」


「通じ合う?ディッド・・・私の機体の声が聞こえるようになった!

あれ・・・リリーがくれた指輪が!!!おもちゃじゃなくなってるわ。
しかも赤いプラスチックだったのに、蒼白く光ってる。

あっ、もしかしてこれがフィアのできる能力?
私も身に着いたというの?そうなのね。


ディッド、ラーガと話せるかしら?」



「ああ、今の状態だと私と違って意識が入りにくいので無理でしょうが、前に立って話せば話せるはずです。」


「そうなんだ。ありがとディッド。
それとこれからよろしくお願いします。」


「こちらこそよろしく。マイマスター」


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