【完】紅(クレナイ) ~鏡花水月~
一章 焔龍
「探したぜ。…お前が紅だろ?」
「………ッ」
ドックン---
初めて聞いたその声に、私の胸の鼓動が大きく高鳴った。
こんな感情は初めてで戸惑いながら振り向くと…、
月光を背に、輝く黄金の髪を持つ男がそこに立っていた。
玉座に座るに相応しいとそう思わせる程…、
そこらにいる者とはまるで別格の空気を纏うその男。
まるでこの世を支配する王が、そこに君臨しているかのようだった---
月の光を浴びてキラキラ金色に輝く髪。
それにしばし、見惚れてしまっていた。
しかしすぐに自分の状況下を察した私は、視線を髪から少し下へとずらす。
すると男の瞳とカチリと合った。
お互い結構離れているにも関わらず男の瞳が強く私を捕らえ、引き込まれるようにそのまま目が逸らせない。
胸の鼓動が…、
より一層、大きな音をたてた---