甘い愛で縛りつけて
◇「早く俺のモンになればいいのに」



「実紅」

電車を降りて駅を出たところで後ろから呼び止められた。
誰かと思って振り向けば、そこにはサラリーマンの中に紛れたスーツ姿の恭ちゃんがいて驚く。

「恭ちゃん、電車できたの? 車は?」
「昨日の夜車検に出したから。代車貸し出されたけど、傷つけたりしても面倒だし」
「なんか恭ちゃんと電車って似合わないね」
「公共機関が似合うも似合わねーもないだろ」

呆れたみたいに笑う恭ちゃんが隣に並ぶ。
なんとなくそのまま並んで歩き出したけど、少しそうしたところで周りからの視線に気づいた。

女の人がチラチラ見てくる理由は、私にもすぐ分かった。
隣を歩く恭ちゃんは、多分、どんなに遠慮がちに判断しても、女の人の半数以上が美形って判断する顔立ちだ。
しかもそれに加えて高身長。

視線を集めちゃうのも分かる。
チラって隣を見上げると、恭ちゃんは視線なんか気にしないみたいに歩いていた。

少し、つまらなそうな仏頂面で。


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