アロマな君に恋をして
16.バラとクローバー



ロンドンの冬は東京と変わらない寒さだった。

そして雪や雨が多く、ここへ来て二週間経った今でもまだ一度も快晴に恵まれたことがない。


それでも、日本に居るよりずっと心は楽だった。


未だ私の中に棲みついたままの彼を思い出す暇もないほど勉強に忙しかったし、私の通うスクールの先生がとてもいい人で、プライベートな時間を割いて私に英語を教えてくれたり、イギリスの伝統的な料理を作って振る舞ってくれたりしていたから。


スクールは先生の自宅、それから彼女の経営するアロマショップも兼ねていて、春になったら素敵な花が咲き乱れるのであろう広いイングリッシュガーデンに囲まれた一軒家。

もちろん多種類のハーブの栽培もしているらしく、冬越しのための小さなビニールハウスが庭の一角にはあった。


生徒は私の他に現地の学生や社会人が数人いたけれど、彼らも皆一様にいい人たちばかりで。

セリちゃんの体調が思わしくなくて学校にいけない時には、マンションに一人では可哀想だからとスクールの皆で代わる代わる彼女の相手をしてくれた。


やっぱり大好きなアロマとハーブの勉強は楽しく、家に帰れば健吾さんとセリちゃんのために料理を作り、そのセリちゃんとも少しずつとも打ち解けてきていたから、充実した日々を送れているという実感は強くあった。



ただ、どうしても心に引っかかるのは……


いつの間にかもう、翌日に迫っていた結婚式のことだった。


< 226 / 253 >

この作品をシェア

pagetop