溺れるほどの愛を(仮)
「絶対にここからでてきてはだめだ」
「小夜、パパもママもあなたを愛しているわ」


「その子はいいだろう!まだ5歳だ!離してくれ!」
「小夜、大丈夫よ。あなたは絶対に守るから」





いつもと同じところまでをみて目を覚ました。
13年経っても忘れさせてくれない出来事は夢としていつも私に呼びかける。
嫌な汗を流すためにシャワーを浴びて朝の用意を急ぐ。
18歳になったばかりの私は世間で言う単位制高校に通っていて今日は2週間ぶりの学校の日だ。
といっても私がとっている授業は昼からで時間にはまだ余裕がある。
今日は図書館によってから学校に行くつもりだからだ。
「いってきます」
小さな声でつぶやいて家を出る。
2年間通っている学校への道は見慣れてきた。

もうすぐ図書館が見えてくるというとき、ふと右側にある小さな路地の方を見ると男性が塀にもたれて力なく座り込んでいた。
どうしたんだろうとよく見てみるとお腹あたりから血が流れているのが見えた。
慌てて近寄った私は恐る恐る声をかけた。
浅い呼吸を繰り返す彼からは返事がなくてどうしようかと焦っているとスーツのポケットから音がして光っていた。
きっと着信が入ったのだろうと思い失礼かなとは思いつつポケットからスマートホンを手にとり電話に出た。
「ソウ、どこで何してるんですか」
電話口の相手は出た瞬間に話し出してしまいびっくりして黙り込んでしまった私に相手は不審に思ったのか言葉を続けた。
「聞こえないんですか?今どこですか」
相手は急いでいるようでどうしたらいいのかわからない私の口は意味のある言葉を発してはくれなかった。
「あの、」
「どなたですか?」
こちらを警戒するように声が低くなりこわくなったけれど血が止まらない男性にそれどころではないと思い直し続けた。
「この電話の持ち主の方のお知り合いですか?今山家スーパーの近くの路地にいるのですが、男性が血を流して座り込んでいるところに通りかかりました。声をかけても返事がなくて、どうしたらいいですか?」
最後の方には血が止まらないことによる焦燥感
からか涙が出てきてしまった。
「山家スーパーの近くの路地ですね?すぐに向かいます。
5分程で到着しますので申し訳ありませんが警察や救急には連絡せずにそこにいて頂けませんか?」
声色が優しくなり安心する話し方で声をかけてくれたことにホッとした私は返事をして通話を切った。
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