甘いのくださいっ!*香澄編追加しました*
トキさんがうちにやって来たのは
確か俺が幼稚園の頃だったか?


かれこれもう20年以上も
この店に仕えてくれている。


歳はちゃんと聞いたことねぇ。
そもそもトキさんは
自分の事を話したがらない。
ただ、知っているのは
うちに来る前は
どこかで家政婦の様な事をしていた
ってことと
後、確か息子が一人いたって
聞いた事があるような、ないような……。


って言うのも
俺がまだガキんちょの頃
トキさんはどちらかと言えば
店よりも俺の面倒を任されていた。


親父もお袋も忙しかったからな。
代わりにトキさんが大抵のことを
してくれていた。
そうだ、確か参観日も
トキさんが来てくれてたっけか……。


まぁ、言うなれば
トキさんは俺にとって
育ての親みたいなもんだ。


トキさんも俺のことを
本当に大事にしてくれていた。


だけど、たまぁに
まだ小さい俺をおんぶしながら
時折、俺じゃない名前を
呼んでたっけ?


詳しくは一度も聞いたことねぇ。
それなりに事情があるんだろうし。
聞いたところで俺がとやかく言える
立場でもねぇし。


まぁ、兎に角
トキさんは俺を我が子のように
時には厳しくも大事に手を掛けて
育ててくれたんだ。


感謝してる。


しかし心配性なのがたまにキズと言うか……。


きっと、今だって先に上がったけど
絶対、休むとは思えないし
頃合い見計らって、夜食だとかなんだとか
言いながらまたやってくるに違いない。













トキさんかぁ……。


俺があの話を聞いても
話してくれるだろうか……。


子供心に何となく
この話はしちゃいけねぇんだなって
そう思い込んだ、あの話を。










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