甘いのくださいっ!*香澄編追加しました*
「今日はありがとうございました。」


家まで送ってもらい、
車を降りようとしたらーーー


腕を掴まれた。


「な、なんですか?」


「ごめん……。」


そう言うと坂下さんは
私を抱きしめた。


「さ、坂下さん?」


「ごめん、なんか焦っちゃって。
折角の初めてのデートなのに、
僕が言った言葉で胡桃ちゃん、
心ここにあらずって感じだったでしょ?」


私を抱きしめたまま話す坂下さんの声が
耳に直に響く。


こういうことに、慣れていない私は
こういうとき、どうすればいいんだろう。
全く分からなくて、ただ、じっとしていた。


「僕は前にも言ったように、
胡桃ちゃんのこと本気だよ。
本当は力付くでも君を独占したい。」


「さ、坂下さん……。」


上ずって上手く声が出ないよ……。


「だけどね、
それじゃぁ、君をーーー
胡桃ちゃんを手に入れた事には
ならないからね。
ちゃんと君の心をしっかりと
捉えるためにも僕と一緒にいるときは
僕のことを見てほしい。
僕だけを見て欲しいんだ。」


漸く抱きしめていた腕を緩めて
もらえたかと思うと今度は
その手を私の頬に添えてーーー


「ちゃんと君の心を捉えるまでは
ここで我慢するよ。」


そう言うと、私の額にそっと
口づけた。















も、も、もう
ダメぇ~。


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