甘いのくださいっ!*香澄編追加しました*
ヨモギ餅
「っで、それが遅刻の原因なの?」


会議室で必要な書類を並べながら私と同期の春川 香澄(はるかわ かすみ)が、疑いの眼差しを向けてくる。


「そ、そうだよ。香澄は昔っから疑い深いんだから。」


そう、昔からーーー


香澄とはどういった訳か、腐れ縁で小学校の頃からの付き合いだ。


「疑い深いってさぁ、ただ、今日食べる和菓子をどれにしようか悩んでて気づけば休憩時間終ってました、なんてさぁ……誰が信じるのよ?」


「課長は信じてくれたし。てゆーか、本当の事だから。」


「前田課長はダメよ。宇宙人に道聞かれて教えてたら遅刻しましたぁって言っても信じる人よ。」


「マ、マジで?」


「ただの噂よ。だけど、あんたは何か隠してる……。
大体、高校入試の時に風邪で熱だして受験できなかったのも、実際は前の日に特売の大福餅買い占めて、食べ過ぎてお腹壊しただけじゃない。それで私はまたあんたと同じ学校に行く羽目になったわけだけど。」


「そんな、古い話止めてよぉ。なんかあの時、勉強ばっかりしてたら甘いもの欲しくなったんだよ……。」


「ほんっと、変わんないね。昔っから、いつ見てもチョコだのケーキだのって、特に和菓子は常に手に持ってたよね?」


「うん。甘いのだーい好き。中でも和菓子は本当に飽きないよ。」


「ほら、口だけじゃなくて、手も動かしてよ。もうすぐ、会議のメンバーが、来ちゃうじゃない。」


はあ……。


ほんと、香澄こそ昔っから、変わんないよ。いつだってテキパキしてて顔だって美人だし……スタイルも良いし……。それに、少し前に彼と別れたって言ってたのにもう新しい彼をゲットしてるし……。


たださ、どーも、お節介なんだよね。それもかなりの。何でも首を突っ込みたがるんだよね 。それでもって説教好きなもんだから……。


だから、香澄には本当の事、言いたくないんだよねぇ。


和菓子屋であんな事になってたなんて……。しかも、
誰でも良いから相手見つけてさっさとファーストキスも
なんならその先も済ませてしまいなさいよ。って、日頃から私に言ってる香澄に本当の事を言おうものなら……











ブルッ


想像したら寒気した。


でもまぁ、結局、私の事を心配してくれているんだけどね。


でもなぁ、言えないよねぇ。












< 6 / 192 >

この作品をシェア

pagetop