clover's mind
三話 豚コマさんのポプリ

◇後悔“役立たず”

 後悔先に立たずとはよくいったもんだ。

 あれだけ心に決めておきながら、いまこの部屋はいかんともしがたい重苦しい空気が俺の首をねじ切らんばかりに締めつけている。

 いっそ怒りにまかせて怒鳴り散らしてくれたほうがいくらかマシというもんだが──彼女のほっぺはそんな余裕がこれっぽっちもないらしい。

「……痛い?」

「みてわからない?」

 いや、それはごもっとも。痛そうですね。ホント。

 せっかく二人きりだというのに甘い香りは(なぜか)正座した俺の膝元に置かれた箱の中からするだけ。

 こんな状況でなければせっかくの姫のお部屋。

 極上なバニラを思わせるまゆみらしいやわらかい白を基調とした内装と枕元に置かれたくたびれた──いやいや、かわいらしいクマのぬいぐるみに胸をきゅんきゅんさせるところだというのに。

 まいったなぁ。

 いつもの「まいったなぁ」とはわけが違う。

 これじゃわざわざ彼女を馬鹿にしにきたようなもんだ。

 そんなつもりはまったくもってなかったんだよ?
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