【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
「…まさか…氷室部長。
野村さんの事………。」

黙っていた豊島さんも口を開いた。

すると、氷室部長は

「…だとしたら、何だって言うんだ?」

と、低い声で言い放った。

「…えっ!?…羽美花…おいっ!」

「……嘘っ!!」

一緒に驚いた2人に部長は

「…別にバラしたきゃバラせばいい。
まあ、既に会社には
お前達が浮気している話は
経理は勿論、総務にも人事にも
話は行ってあるから安心しろ。」

「…はっ!?」

「…えっ!?」

「…部長?」

寝耳に水の話に私まで驚くと

「…証拠も提出済だ。
…笠置と豊島、お前達の浮気現場を
他の社員に目撃されていたのが
運の尽きだったな。
…まあ、せいぜい
明後日を楽しみにしてるんだな。
彼女を傷つけた事がどれほど痛いものか
身をもって知るといい。」

「……あっ、あの…。」

「……嘘…でしょ?」

2人の動揺している姿を前に

「…恨むなら…彼女や周囲を欺き
馬鹿な事をした自分達を恨むんだな。
…言っとくが
彼女を逆恨みするような真似をしたら
許さないから…覚えてろよ!!」

そう言い放つと

「…羽美花。
用は済んだ…。
馬鹿逹はほっといて帰るぞ。」

氷室部長は前を向くと私の手を引いた。

そして、動揺している2人に

振り向く事なく歩き出した。


駐車場に向かう中で

何度も氷室部長を横目で見た。

切れ長の目が素敵な人だけど

さっきまでの

満君や豊島さんに対する目つきは

何だかとても怖かった。

総務や人事に何をしたんだろう…?

提出した証拠って何?

気になるけど

触れてはならないオーラを感じて

聞く事はおそらく出来ない。

でも…私を助けてくれた。

『…俺が助けてやる』

怖かったけど…嬉しかった。

私の視線に気づいた部長が

「…羽美花…?もしかして…。
まだ寄りたい所あったか?」

さっきよりは優しいけど

まだ瞳が穏やかではなさそうな

部長の表情に

「…あっ、いえ…。
私、もういいです。」

と、無理やり笑顔を作った私に

「…そうか。なら、帰るぞ。」

と、氷室部長は私の手を握ったまま

再び歩き出した。




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