【完】天使の花〜永遠に咲き誇る愛を〜
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駐車場に着いて車に乗せられ

氷室部長は車を発進させた。

無言のまま、ショッピングモールを

後にした車は再び高速に入り

途中SAに寄って休憩を取った。

でも、部長の口数は少なく

車から降りて私の手を引く時の表情も

朝よりは強張っているように感じ

喫煙場所で煙草を吸う仕草も

何かに苛立っているように見えた。

私は部長の傍に近づくと

お手洗いを出てから外売店で買った

おいしそうな熱々のコロッケパンと

自販機で買った

あったかいコーヒーを手渡した。

彼は私の顔を見て

「…えっ!?」て顔をした。

でも、段々優しく微笑むと

「…ありがとう…美味いな。」

と、パンを受け取ってくれて

美味しそうに頬張ってくれた。

その顔に少しホッとしながら

「…本当だ…美味しい。」

私も同じようにぱくついた。



偶然だったとは言え

私が満君と豊島さんに会った事を

氷室部長はまだ気にしてる?

私を一人にさせた事を悔やんでる?

それとも

私があんな場所にいたから怒ってる?

泣いた事を怒ってる?

言葉をグッと飲み込んだ。


再び走り出して

高速を出て一般道へ入り

彼のマンションに帰宅した時

時計は17:00に差し掛かるところ。

「…氷室部長、夕食どうしますか?
何か…作りましょうか?」

あまり会話がなかったから

話のキッカケをと思って

手を洗った後で私は

コートをかけながら話しかけた。

すると

「…いや、まだいい。
それより…羽美花、こっちに来いよ。」

同じく手を洗って

先にジャケットを脱いで

ソファーに座っていた彼が

隣をトントンと軽く叩いて

『座れ』と瞳で私に合図を送った。


「…はい。」

言われた通りに隣に座った。


座った途端

「…きゃっ。」

突然彼は私の肩を引き寄せた。

「…氷室部長。」

抱き寄せるその腕はとても逞しく

心臓がドキドキした。

そうだ…言わなきゃ。

ドキドキしながらも

「…氷室部長。あの…。」

私は口を開いた。
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