滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬

ずるいアンター彼視点ー


ーー奈緒子さんと別れた翌日、
俺はアメリカから帰ってきたその足でとある会社に向かった。




「いや、社長とお会いするためにはあらかじめアポを取っていただかないと…」

「だからさ、真壁蒼が来たって社長に言えばいいじゃんよ!わざわざ約束なんか取る必要なんてないんだから!」




広いロビーに響き渡る、怒鳴り声。



受付嬢と言い合いになって早数十分が経った。

頑なに拒む相手に徐々に苛々が募ってくる俺。




ったくなんでアイツに会うぐらいで、
こんなとこで足止めされなきゃなんねーんだよ!!




「いいから上と連絡とってよ、詳しくは俺が話すからさ!」



ついついヒートアップしてしまう俺を、二人の受付嬢は困り顔で顔を見つめ合う。



< 94 / 262 >

この作品をシェア

pagetop