赤い流れ星
side シュウ




「電車の時間まで、まだ時間があるな。
今のうちにあそこで何か食っておこう。」

「はい。」



俺達は、駅前の小さな喫茶店に入った。
今朝は早くから移動してて、ろくなものも食べてなかったから、一休み出来るのは嬉しい。
和彦さんは、かなりタフな人だ。
俺の方が少しだけとはいえ若いのに、俺よりもずっと体力がある。



「疲れたか?
でも、ここまで来たらあと少しだ。
さっきの情報はかなり信憑性が高いぞ。」

「そうですね。
まさか、同じ地名が同じ県の中に二つあるとは思いませんでしたよね。」

和彦さんと二人の旅はさぞ気詰まりだろうと思っていたが、意外にもそうでもなく、確かに気は遣うものの、けっこう楽しいと感じられる程だった。
和彦さんは、とても頭が良いというのか論理的な考えをする。
行動力もあるし、けっこう押しも強い。
俺に似てる部分があるせいか、一緒に行動していてストレスがたまらない。



「どうした?ぼーっとして……
美幸のことでも考えてるのか?」

「やだなぁ、違いますよ……
まぁ、確かに気にはなりますけどね。」

「兄の前でそんなこと良く言うな。」

「……本当のことですから。」

俺の言葉に、和彦さんは俯いて失笑した。



「ひとつ、聞きたいんだけど……
美幸のどこが好きかって聞かれたら…君はすぐに答えられるか?」

「……いえ。答えられません。」

「即答なんだな。
……それは、美幸が設定したからか?
あ、誤解すんなよ……何も俺はその話を信じたわけじゃない。」

「そうじゃありませんよ。
でも…これが、ごく普通の恋人達のことだとしても、すぐには答えられないもんじゃないでしょうか?
俺は、逆に即答できる方がおかしいと思います。
たとえば、顔が好きだからとか金を持ってるからとか、答えが単純であればある程、答えやすいんじゃないかって……俺はそう思いますよ。」

和彦さんは俺の答えに、苦笑いを浮かべて、じっとみつめた。



「なかなかうまいこと答えるな。
……それじゃあ、君は、美幸が好きだという設定をされてあいつを好きでいることに、なんていうか…そう、違和感みたいなものを感じることはないのか?」

「ありませんね。
俺がひかりを好きな理由が、あいつの作った設定だからだとしても……
それでも、俺があいつを好きだってことには何の影響も与えない。
俺があいつを好きだって気持ちは、真実なんですから。」

俺がそう答えると、和彦さんの表情は複雑なものに変わった。
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