ぼんやりと窓から庭を見下ろしていたミアは、憂鬱な溜め息を吐くと後ろを振り返った。

「この先どうなっちゃうんだろうね」

長椅子に座り書類に目を通していたカイは、妻の声に顔を上げた。

心配そうな表情のミアと目が合うと、カイはゆっくりと立ち上がった。

「どうしたんだ?」

ミアの隣に立ち窓の外に目を向けると、屋敷の中庭に武装した男達が集まっているのが見えた。

「ねえ、カイ……本当にエザリアと戦争になるの?」

青ざめた顔のミアを、カイは支える様に長椅子に連れて行った。

「戦は避けられないだろう。年が明ければエザリア軍が攻めて来るはずだ」

「そんな! ねえ、私リゼに手紙を書いて頼んでみる。国王陛下に戦を辞める様にお願いして欲しいって」

「それは無理だ」

「どうして? リゼは国王陛下に愛されてるってカイも言ってたじゃない! リゼから頼めば国王陛下も……」

「ミア」

不安からか声を大きくするミアの言葉を、カイは厳しい声で止めた。

「クラウス王は一度決めた事は変えない」

「国王陛下は、自分の奥さんの実家を平気で攻める様な人なの?」

「必要なら攻撃して来る。だがこうなる前にクラウス王は何度も和解の機会をサランに与えてくれた。それを拒否したのはサランなんだ」

クラウス王は驚く程の寛容さで何度も使者を送って来た
王は最後まで戦を避けようとしていた。

「どうして? どうしてお義父さん達はエザリアに逆らうの?」

「……」

「戦なんてしたら、みんな死んじゃうかもしれない。カイだって……お願い、カイからお義父さんを説得して! 国王陛下に謝るようにって」

ミアの必死の訴えを、カイは悲しそうな顔をして退けた。

「無理だ。もう全てが動き始めている……ミア、もう戦は始まっているんだ」

「どういう意味?」

ミアは混乱した様な表情でカイを見た。

「……どっちにしろエザリアを倒さない限り俺達は生きていけない。ミア心配しなくていい、必ず勝つし、ミアは俺が守る」

「でも、それならリゼはどうなるの?」

カイに抱きしめられ、ミアは涙を流しながら言った。

カイの顔が一瞬強張る。

「……リゼは……取り戻すよ。クラウス王から引き離す」

「本当に? じゃあエザリアを倒してもリゼは助かるの?」

「ああ、リゼだけは助ける」

「良かった」

ホッとした様子のミアの髪を撫でながら、カイは続けて言った。

「ミア、俺達は住まいをミネアに移す。支度をしてくれ」

「え? ミネアにって、どうして?」

怪訝な顔をするミアに、カイは言い聞かせるようにした。

「ミア、今は何も聞かずに俺の言う通りにしてくれ。ミアの事は必ず守るから」

「……分かった。カイを信じてるから」

ミアは頷き、カイの胸に顔を埋めた。

不安ばかりだけれど、カイの言う通りにしていれば大丈夫なんだと思った。

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