流れる景色に目を向けながら、リゼは苦しい息を吐いた。

カイの駆る馬に揺られ、もう随分経っていた。

リゼはカイの腕に抱かれ、ただ座っているだけだったけれど、子を宿しているせいか先程から気分が悪く辛くて仕方がなかった。

「リゼ、どうしたんだ?」

リゼの様子に気付いたのか、カイが馬の速度を落として言った。

カイに渡されたローブを頭から被っていたけれど、わずかに覗く目元からリゼの異変に気付いた様だった。

「……少し気分が悪くて」

「気分が? どこか悪いのか?」

カイが眉をひそめながら言う。

「……そう言う訳じゃないけど……」

少し躊躇ってから、リゼは素っ気なく答えた。

長時間、馬に揺られ続ける事がお腹の子に良く無い事は分かっていた。

だからといって、カイにその事を話す訳にはいかなかった。

カイは今のところリゼに危害を加える事は無い様だし、身体を心配してくれている。

けれど、クラウスの子を身ごもっていると知られたらどうなるか分からない。

リゼには何もしなかったとしても、子の存在は許されないだろう。

(誰にも言えない……)

目眩に耐える様に目を閉じていると、隣を走っているハルトの声が聞こえて来た。

「カイ、どうしたんだ?」

「リゼの体調が良くない。どこかで少し休む」

「はあ? そんな暇は無いだろ? 早くしないとクラウス王の追っ手が来る。今頃城は大騒ぎだろうしな」

ハルトは苛立ちを込めた声で言った。

「それは分かっている。少し休憩を取ったら直ぐに移動する」

カイはハルトの言い分を聞く気は無い様で、近くを流れる川に目を遣りながら言った。

「あそこで休もう」

「……本当に足手まといだな。カイが居なかったらここに捨てて行くところだ」

ハルトは憎しみを込めた目で、リゼを睨み付けながら言った。

「ハルト、リゼを連れ帰るのは、父や王も賛同している事だ。お前一人が反対しても無駄だし、リゼに対して乱暴な扱いは許さないからな」

(カイのお父さんが? それに王って……)

話が見えない。
リゼは更なる不安に顔を曇らせた

カイがリゼを攫うのは、あくまで個人的な感情からだと思っていた。

けれど、今の話を聞くと何か別の目的が有るのではと疑惑が湧いて来る。

カイの父、サランの前代表は個人的な感情では動く様な人ではない。

「リゼ、少し降りて休むんだ」

カイに言われ、リゼは考えを中断して頷いた。

馬から降りられる事は嬉しかった。

身体を休められるし、時間も稼げる。

カイに助けられて馬から降りたリゼは、フラフラと澄んだ水が流れる川に近付いて行った。

この作品のキーワード
異世界  後宮  恋愛  ファンタジー  愛憎 

感想ノートに書き込むためには会員登録及びログインが必要です。