きっかけは、
友達の有希に
The capricious skyのライブに
連れて来られたことだ。

そのメンバーの一人
五十嵐燈馬に
俺は好かれたのだった。

歳は
五つ下の二十歳。

ノンケだったはずが
絆されたのか
気付いたら
燈馬の告白に
首を縦に振っていた……

この後に待ち受ける
The capricious skyの
特に燈馬ファンからの
嫌がらせの度合いを
この時は
まだ知らなかった……

**二ヶ月前**

「ねぇ、爽毅
お願いがあるんだけど」

有希にそう言われて
連れてかれたのが
The capricious skyのライブで
しかも、屋外・最前列……

これが後の俺の運命を
決めることになる。

燈馬に告白されたのだ❢❢

実を言うと、
最初の告白は
断って帰って来た。

その後、何回か
有希に連れられて
ライブに行く度に
告白され続け
遂に、二ヶ月前
肯定して
しまったのだった。

The capricious skyのリーダー
五十嵐燈馬と
付き合うことになったのだ……

彼曰く
一目惚れらしいが
もしかしたら、
俺も無意識の内に
好きになってた
のかも知れない……

俺達の関係が
何処から漏れたのか、
付き合い出して
一ヶ月経った頃から
嫌がらせの手紙が
家のポストに
入ってることが
多くなった。
差出人は多分、
男女混ざってる気がする。

手紙は二種類あった。
一つは、綺麗な字だが
書いてある言葉は
俺に対する非難だ。

もぉ一つは、
明らかに男だと
分かる様な字で
こちらもやはり、
非難の言葉が
書き連ねてある。

こっちの手紙には
ご丁寧に剃刀の歯が
一緒に入ってる。

こう言っちゃなんだが
やってることが
子供レベルだ。

そもそもだ、
燈馬にしても
他のメンバーにしても
恋くらいするだろうよ。

ファンというのは、
アイドルや芸能人を
神化し過ぎだと
俺は思ってる節がある。

芸能人だって、
人間なんだよと
言いたくなる。

その日、例の手紙に
入ってた剃刀の歯で
指を切ってしまった。

これがいけなかった……
その日は
The capricious skyyの
マネージャーの樋野さんが
家まで迎えに来てくれる
予定になっていた。

何でも、燈馬の
誕生日だから
是非来てくれと
頼まれたのだった。

迎えに来た樋野さんが
俺の怪我に
気付いてしまった。

しかも、一カ所なら
適当にごまかせたが
二・三ヶ所だったから
驚かれた。

「どうしたんですか!?
その怪我……」

まぁ、そぉなるよな。

右手の親指と人差し指と
左手の中指に
絆創膏を貼っている。

後部座席に
乗ってたらしい
利久がその言葉で
前に乗り出して来た。

「本当だ、
どうしたの?それ」

『後で話す』

そう言って、
助手席に乗った。

The capricious skyの
メンバーに話したら、
激怒しそうだ……

そぉ思いながら
樋野さんの
運転する車に
揺られて燈馬の家に
向かっていた。

「着きました」

車を駐車場に停め
エントランスを通り、
エレベーターで
最上階に向かう。

玄関に着くと、
チャイムを鳴らす前に
ドアが開いた。

そこには、
メンバーの紅一点
加奈が居た。

「いらっしゃい、爽毅兄」

三つしか
変わらないが加奈は
俺をそう呼ぶ。

「玄関で
話してないで中に入れよ」

声を掛けて来たのは
メンバー最年少の松川充だ。

かなり生意気だが
憎めないタイプだ。

「確かに」

加奈が同意して
中に入れてくれた。

部屋に入るなり
燈馬が目敏く、
俺の怪我に気づいた。

「爽毅さん、
その怪我は……?」

言っていいのだろうか……

The capricious skyの皆に
迷惑の様な気がして
つい黙り込んでしまう。

「後で話すって
車の中で
言ったじゃないですか」

樋野さん覚えてたんだ……

「白状しちゃえ」

隣に居た利久にまで
まくし立てられ
仕方なく
言うこととなった。

『実はな……』

そう話し出した俺は
包み隠さずに
全て話した。

手紙が二種類あること
その一つに
必ず剃刀の
刃が入ってること。

五人は黙って
俺の話しを
聞いてくれた。

話し終えて、
真っ先に口を開いたのは
予想通り、燈馬だった。

「なんで、その手紙が
来た時に俺達に
言わなかったんだよ」

つかみ掛かる勢いで
詰め寄って来た
燈馬は悔しそうな
目をしていた。

『言えるわけないだろう』

燈馬は
恋人だから別として、
他のメンバーや
樋野さんに言ったら
確実に迷惑を
かけることになる。

だから、バレるまで
言えなかった……

「爽毅兄さん、
私達は友達なんだから
気使わないでよ」

加奈の言葉を
皮切りに
樋野さん・利久・充が
俺を励ましてくれた。

The capricious skyの皆の
優しさが心に浸みた……

『皆、ありがとうな』

手紙の話しは
終わりにして
メインである燈馬の
誕生日会を
始めることになった。

『何はともあれ
誕生日おめでとう』

「サンキュー」

テーブルの真ん中に
置かれたケーキの
蝋燭の火を
燈馬が消した。

それを加奈が
切り分ける。

「はい、まずは
主役の燈馬ね」

その後は適当に
配り、酒は飲めないから
炭酸で乾杯した。

一段落ついたところで
一服する為に
ベランダへ出た。

少しして、樋野さんが
携帯灰皿を持って
俺の隣に来た。

『樋野さんも
煙草吸うんですね』

意外だ。

「えぇ、まぁ……
女が吸うのは反対ですか?」

苦笑いで聞かれた。

『そんなことないですよ』

うちは母親も吸っていた。

二人で中に戻ったら
燈馬が抱き着いて来た。

「樋野さんと何話してたの?」

嫉妬したらしい。

カワイイところもあるんだな。

『煙草の話』

そう言えば、
燈馬は煙草吸わないな。

「浮気、しないでね」

バカだなぁ、
燈馬を愛してるだから
浮気なんてするわけない。

『しないよ、
俺が愛してるのは
これからもずっと
燈馬だけだからな』

そう言ったら
顔を真っ赤にして
俺から離れ
皆の方に行ってしまった。

可愛いな。

燈馬と
入れ違いに利久が来た。

「あんな恥ずかしい
台詞真顔で言えるな」

最初は驚いたけど
付き合ってる内に
本当に好きになって
今では愛してる。

『本心なんだからいいだろう』

そう言ったら
利久が呆れた顔をした。

「二人共、こっちに来なよ」

充に呼ばれてリビングに向かった。

すると、燈馬が
爽毅が此処に住めば?
と言い出した。

そんな簡単に言うなよ!!

樋野さんは
何も言わず考えていた。

何処から漏れたのか
わからないが
あの程度の嫌がらせなら
まだいい方だろう。

流石に 、直接狙われたら
逃げるくらいしか
出来ないかも知れないが……

そりゃ、俺だって
好きな奴と一緒に暮らしたいが
相手は今大人気の
バンドのボーカルだ。

『嬉しいが、
そう簡単じゃないだろう?』

週刊誌の見出しに
【人気バンド
The capricious skyの
イケメンボーカルはゲイだった!?】
なんて書かれたら大変だ。

それだけは避けたい。

「だけど、やっぱり、心配だ」

こういう奴だよな。

『ありがとうな』

燈馬始め、
The capricious skyの
メンバーは優しい奴らばかりだ。

だけど、樋野さんや他のメンバーに
迷惑がかかるしな。

「分かりました。
二人が一緒に居られて
なおかつ、ファンに見つからない所を
探しますから一ヶ月程お時間を下さい」

マジ!?

そりゃぁ、恋人と居たいのは
俺だって一緒だけど、
本当にいいのだろか?

樋野さんの言葉に驚いてしまった。

てっきり、燈馬を
説得するかと思ったのに……

『爽毅、やったな❢❢』

純粋に喜ぶ燈馬とは
裏腹に俺は複雑な気持ちだった。

勿論、二人で居られるなら
それは嬉しいけど
燈馬は世間で言う“芸能人” だ。

そして俺は“一般人”。

しかも“男”。

だから、よけいに納得できないのだろう。

一般人でも“女”だったら
少なからず“男”からの嫌がらせは
なかったんじゃないだろうか……

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一般人  芸能人  仲間  嫌がらせ  BL