夏色の約束。~きみと生きた日々~


その砂が全て落ちきる前に自分の手で砂を払うと、なつはまっすぐ前を向いた。


海はもう濃い茜色に染まっていて、地平線の向こうには真っ赤な夕日がかかっている。


「だからあおちゃん、ちょっとだけ遠距離恋愛になるけど……それまで、待っててね」


なつはそう言って、もう一度だけ大きく息を吸う。


そして────


「あおちゃん、大好きだよ!」


海に向かってありったけの思いを叫ぶと、なつは思いっきり笑った。


あおちゃんは、なつの笑顔が大好きだ。


だからなつが笑うと、あおちゃんもきっと笑ってくれる。


………そうだよね、あおちゃん?


───なっちゃん。


……ほら。


なつの笑顔に応えるように、波の音にまぎれて少しだけ聞こえた大好きな君の声。


君のように優しく吹く風が、“頑張れ”とでも言うように、なつの背中を押してくれていた───。


               ーfinー


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