夏色の約束。~きみと生きた日々~


なんて、幸せなんだろうね。


こうして自分の誕生日を祝ってもらえることが、こんなにも嬉しいことだったなんて、なつ、知らなかったよ。


「あっ、それからね、菜摘ちゃん」

「なぁに?」

「えっとね!」


ひとりでプレゼントを両手に抱えてにやにやしていると、なつの目の前にぴょこっと出てきた花鈴ちゃん。


花鈴ちゃんはなつの顔を見てにこっと笑うと、


「今日は菜摘ちゃんのバースデーパーティーを行います!」


ってなつの頬を人差し指でつんつんしてきた。


「だから、放課後5時に、海にこいよ!」


花鈴ちゃんに続いて、クラスの男の子がそう言う。


まさかなつのためにパーティーまで開いてくれるとは思ってなくて、なつのテンションは一気に急上昇。


………でも。


なつにはひとつだけ、気がかりなことがある。


バースデーパーティーは、海でやるんだよね……。


正直、今は海に行きたくない。


だって、9日前の苦い出来事が脳裏に思い出されて、なつの胸がぎゅっと苦しくなるから。


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