誉が言い終えるのと同時に、目の前の信号が黄色から赤に変わった。
 一穂はアクセルから足を放すと、それをブレーキにかけた。

「――私をからかってる?」

 緊張のメーターが限界を振り切り、心にもないことを口走ってしまった。
 後悔したが、後の祭りだ。

 案の定、誉は表情を曇らせた。
 可愛げのない、冷酷な女だと呆れられたに違いない。

「――すいません……」

 休憩室にいた時と同様、謝罪してきた。
 誉は悪くない。
 むしろ、一穂が謝罪すべき立場だ。

「いちいち謝んないで」

 刺々しい態度しか取れない自分がもどかしい。
 一穂は今、誉ではなく自分自身に対して腹を立てていた。

 そのうち、信号が青に変わった。

 一穂はアクセルを踏み込んで車を加速させる。

 時折、ナビをするために誉が声を発したが、それ以外はふたりとも終始無言のままだった。
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