『話ぐらいだったら、これからもちゃんと聴いたげるから安心なさい。――おっと、そろそろ旦那がお風呂から上がって来そうだ』

 どうやら、倫子の旦那が入浴し始めたタイミングで一穂にメールしてきたらしい。
 倫子の旦那は寛容な人だが、さすがに長電話は迷惑だろう。
 そう思い、一穂からお開きにする旨を伝えた。

『今度は久々に飲みながら話そう。一穂が相手だったら旦那もふたつ返事で了解してくれるし』

「いい旦那さんだよね」

『今頃気付いたか』

 一穂の言葉ですっかり惚気けている。
 倫子は旦那が大好きだから、旦那が褒められると機嫌が俄然良くなる。

「それじゃあ切るね。倫子、明日は休みだっけ?」

『うん。久々に旦那と休みが重なったからデート。一穂は仕事だよね?』

「そ。あんた達がラブラブしている間、私はせっせと真面目に働きますわ」

『あはは! ま、明日はせいぜい頑張りなさいな。じゃあ、ほんとに切るよ?』

「はいよ、頑張りますわ。じゃ、おやすみ」

『おやすみー』

 倫子の挨拶を潮に、どちらからともなく電話を切った。

「正直に話せば――か」

 一穂は、倫子が言っていた言葉を反芻する。

 本音を言えば、誉の反応が怖い。
 しかし、倫子の言う通り、気まずいままでいるのはもっと嫌だ。

 一穂は深呼吸を繰り返した。
 とにかく、今からでも心の準備をしておかないと、いざとなったら何も言えなくなる。

「大丈夫、大丈夫……」

 呪文のように唱えながら、一穂は仰向けになり、瞼を閉じる。

 携帯を握りしめたまま、いつの間にか、深い眠りに落ちていった。

[Chapter.1-End]

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