だが、真希は臆した様子はなく、なおも誉の表情を覗いながら続けた。

「だって、いつになく私の扱いが邪険だもん。ちょっと前まではもうちょっとソフトだったよ? となると、女がいるって考えちゃうのは当然じゃない?」

「――どういう思考回路してんだよお前は……」

 誉はガックリと項垂れた。
 確かに、真希の指摘は的を射ている。
 だが、〈女がいる〉わけではない。

「ねえねえ、誉が好きになった人ってどんな人? 私の知ってる人? 今度紹介してよ」

「ああもう! 誤解だ誤解! 俺はずーっとひとりだ! さっきから言ってんだろ? 分かったら食ってとっとと帰れ!」

 切れかけていた誉は、自分でも驚くほどの剣幕で真希に言い放った。

 さすがの真希もこれには絶句していた。
 しばらく目を見開き、口を小さく開けたままの状態でいたが、やがて、「分かった」と小さく口にした。

「もうちょっとしたら帰るから……」

 その言葉通り、真希は自分の弁当を綺麗に平らげ、緑茶も空にしてから誉のアパートを後にした。

 自分を心配して来てくれたのに、真希を邪険に追い返すような結果になってしまい、誉も少なからず後悔した。
 しかし、真希に入り浸られるのもまた心底迷惑だと思っていた。
 少しぐらい厳しく言わなければ、真希は分かってくれない。

「――俺の女になんて、なるわけねえだろ……」

 食べかけの唐揚げ弁当を虚ろに眺めながら、誉は一穂の事を思い浮かべる。

 誉の中の一穂は、眉根を寄せながら、困ったように笑みを浮かべていた。
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