彼女と迎える三回目のクリスマス。
 一回目のクリスマスには同棲を決めた。
 二回目のクリスマスにはプロポーズをするつもりだった。
 三回目は……

 三回目のクリスマスを、俺はどうするんだろう。


 彼女はいわゆる植物状態だと医師は言った。
 手術の直後からその懸念は示されていたが、彼女の命を支えていたチューブが一つずつ取れ、怪我が治るにつれてそれは現実のものになっていった。

 怪我は治った。
 呼吸器も必要ない。
 彼女の体は回復した。
 なのに、意識だけが回復しない。

 彼女が目を覚ましたと喜び医師を呼んだ日もあった。
 けれど、瞼が開いてしまっただけで意識が戻ったわけではないと医師は告げた。

 彼女は生きている。
 呼吸もしているし、心臓だって動いている。
 傷も塞がり新しい皮膚が生え、手術のために剃った髪も伸びた。
 なのに、彼女はここにいない。

 ベッドで横たわり続ける彼女の体は衰える一方で、表情のない顔はまるで知らない人のようだった。
 それでも俺は毎日彼女を見舞い続けた。

 職場と病院と自宅を往復するだけの一年。
 不安を薙ぎ払うように仕事に没頭して、病院に行っては彼女に語りかけ、少しでも病状がよくなればとマッサージをする。
 自宅には寝に帰るだけだ。
 以前と同じ一人で暮らしに戻っただけだというのに、彼女がいなくなった部屋はやけに広かった。

「あなたはまだ若いんだから」

 彼女の両親がそう言ったのは、彼女の状態がこう着してから何ヶ月後のことだったろう。
 優しい彼女の両親は、娘である彼女自身だけでなく、その恋人である俺のことも案じてくれていた。
 その優しさが身にしみて、俺自身が二人の重荷になっていることも感じていた。

 彼女を思い、気を病み、やつれていく俺を見てなんとも思わないはずがなかった。
 二人も、俺と同じようにやつれてしまっているというのに。

「もう少しだけ、彼女の傍にいさせてください」

 そう言ってから、更に何ヶ月経ったろう。

 もうすぐ一年が経つ。

 彼女にプロポーズするつもりで、約束を破って、一緒にケーキを食べる約束をして、彼女が事故に遭い、意識を失ったあの日から。

 変わらない時の巡りに街は華やぎ、イルミネーションがきらめく。
 そんな街中を、俺は今日も病院へと向かっていた。

 今年こそは本当に、早く仕事が終わってしまいそうだった。
 今夜も会社に泊まり込んで、明日の午前中に納期の迫った仕事も終わるだろう。
 去年みたいな急の仕事が入る気配もない。

 なんて皮肉なんだろう。

 これがもし、去年だったなら――こんなことにはならなかったのに。

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