あの日交わした口付けは、本当に甘い味がした。
 と、彼女はのちに語る。

 ずっと前から意識があったのにそれがわからなかっただけなのか。
 それとも本当にあの瞬間に意識が回復したのか。
 真相は誰にもわからない。

 それでも彼女はそこにいた。
 ここにいる。

 もうお人形遊びなんかじゃない。
 例え鈴の音でも、彼女と心を交わすことができる。
 以前と変わらず、彼女は俺の心の中心に居た。

 少しずつ表情も戻ってきた彼女は、ほほ笑む。

「幸せ?」

 チリン、チリン――

「俺も」

 春には専門のリハビリ施設に移ることも決まり、彼女も早く元気になりたいと張り切っているようだった。

 なにを一番できるようになりたいかという質問に、彼女は鈴の音で答える。
 歩くことよりも喋ることよりも、なによりも字を書けるようになりたい。
 他の項目には鈴一回だったのに、それだけに鈴を二回鳴らした。


「もしかして、俺との――――」


 俺の質問に、鈴はまた二回鳴った。
 四回目のクリスマスは、きっと結婚記念日になる。

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